ひざの痛み、変形性ひざ関節症のメカニズム、変形性ひざ関節症を発症しやすい要因

変形性ひざ関節症の推定患者数は男性が約860万人、女性が約1670万人いると推定されています。
50歳以上の2人に1人が変形性ひざ関節症といわれています。
変形性ひざ関節症で様々な症状が起こりますが治療は運動を中心とした保存療法が中心となります。

■変形性ひざ関節症のメカニズム
私達のひざは太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)と脛の骨の脛骨(けいこつ)、ひざのお皿である膝蓋骨(しつがいこつ)という3つの骨でできています。
大腿骨と脛骨の間には十分な厚みの軟骨と半月板があり、クッションとなってひざの衝撃を吸収してくれています。
しかし体重やひざの曲げ伸ばしなどによって負担がかかり続けると、次第に軟骨や半月板が磨り減っていきます。

■変形性ひざ関節症の症状
・立ち上がりや歩き始めなどの動作の開始時にひざが痛む
・ひざが痛くて正座や階段の上り下りが困難
・ひざに水が溜まる
・安静時にもひざが痛む
・ひざを伸ばして歩行できない

●軽度の変形性ひざ関節症
磨り減った軟骨や半月板のかけらが散らばって関節を包んでいる滑膜(かつまく)を刺激して炎症が起こります。
立ち上がるときに痛む、こわばる、動き始めに痛むなどの症状が起こります。

●中等度の変形性ひざ関節症
さらに磨り減りが進行し関節が変形して骨と骨の間がさらに狭くなります。
正座がしにくい、階段の上り下りでひざが痛む、ひざに水が溜まるなどの症状が起こります。
ひざに溜まる水は関節液のことで関節の栄養となるだけではなくひざをスムーズに動かす潤滑油の働きもしています。
滑膜を刺激することで大量に作られてしまいます。

●重度の変形性ひざ関節症
軟骨が完全になくなり骨と骨が直接ぶつかって強い痛みが起こります。
じっとしていてもひざが痛む、ひざの曲げ伸ばしが困難、歩行時の横揺れ、歩行困難などの症状が起こります。
骨の中には神経が通っていて軟骨がなくなって骨同士が擦れ合うようになると神経も擦れ合うようになってしまい強い痛みが起こります。
痛みが強くなってくると外出するのも嫌になり引きこもりがちになり、うつ状態、認知症、寝たきり状態になってしまうこともあります。

■ひざにかかる負担
日常生活を送るだけでもひざには負担がかかっています。
平坦な道を歩くだけでも片側の足に体重の2.6倍もの負担がかかります。
階段の上りで3.2倍、階段の下りで3.5倍もの負担がかかります。

■変形性ひざ関節症になりやすい人
・家族で変形性ひざ関節症になっている人がいる
・高齢者
・肥満体型
・O脚
・ひざの外傷
・女性

●家族で変形性ひざ関節症になっている人がいる
軟骨の磨り減りやすさはひざの使い方や生活環境が大きく左右しますが遺伝の影響を受ける場合もあります。

●高齢者
加齢に伴って軟骨は劣化していきます。
また筋力が低下することも関係していきます。
筋肉は歩いて足が地面に着く時に関節にかかる衝撃力を吸収してくれるため、筋力が低下すると関節にかかる衝撃力が増してしまいます。

●肥満体型
体重が増えるとひざへの負担が増してしまいます。
ひざ関節の中にも脂肪がありますが、脂肪細胞から分泌されるアディポカインという物質がひざ関節に微小な炎症状態を引き起こすと考えられています。
炎症状態があると軟骨が壊れやすい状態になり、変形性ひざ関節症が進行しやすくなると考えられています。

●O脚
O脚は主に内側の軟骨が部分的に磨り減って骨同士が擦れ合う状態になってしまいます。

●ひざの外傷
靭帯・半月板・軟骨の損傷、ひざの中や周りの骨折があると変形性ひざ関節症を発症しやすくなります。

●女性
骨・軟骨・筋肉が健康に保たれるには女性ホルモンのエストロゲンが重要になります。
閉経後にはエストロゲンの分泌量が急激に減るため変形性ひざ関節症になりやすくなってしまいます。
50歳以上の女性は男性よりも脛骨が約4倍、膝蓋骨が約3倍のスピードで軟骨が磨耗してしまうといわれています。

■変形性ひざ関節症の検査
・問診:ひざの痛みや動きなど
・触診:痛み、違和感、腫れ
・関節液の検査:リウマチ、感染症
・画像検査:X線、MRI

■変形性ひざ関節症の治療法
変形性ひざ関節症の治療法は運動を中心とした保存療法が中心となります。
痛くても運動を続けることが重要になります。
痛みが強い場合はサポーターなどの装具や薬も用います。
保存療法が効かない場合は手術を検討します。