心房細動の治療法について、脳梗塞、心不全、抗不整脈薬、心拍数を減らす薬、カテーテル治療

心房細動の症状がない人が増加していて病院を受診しない人が増えています。
心房細動の症状がなくても将来に脳梗塞や心不全を起こしやすいので適切な治療を受けることが大切になります。
心房細動がある人は、脳梗塞や心不全のリスクが高くなるため治療や管理で合併症を防ぐことが大切です。
カテーテルによる心房細動の治療には高周波カテーテル・アブレーション、冷凍凝固アブレーションがあります。

■不整脈について
不整脈には健康な人でも起こる問題のない不整脈から、命に関わる危険な不整脈まであります。
そのため自分がどのタイプの不整脈であるかを知っていることも大切になります。
不整脈の全てが病気ではありません。
正常な心臓は規則的に1日十万回動いていますが、脈の規則性が一瞬でもなくなることも不整脈とされています。
たまに少し乱れることは誰にでも起こることです。
不整脈で受診される人の約9割は治療しなくても問題がない不整脈とされています。
ただし残りの1割は命に関わる危険な不整脈もあるので注意が必要です。

■心房細動(しんぼうさいどう)について
心臓は洞結節(どうけっせつ)という場所から出る規則的な電気信号により1分間に60〜100回程度のリズムで動いています。
心房細動(しんぼうさいどう)では複数の電気信号が心房の中を走り回る状態になり、1分間に400〜600回の速さで心房が細かくふるえるように動きます。

■心房細動の症状
・脈の乱れ
・動悸
・めまい

症状が現れないことも多く、心房細動の人の約半数は症状を訴えたりしません。

■心房細動の合併症
・脳梗塞
・心不全

心房細動がある人は、脳梗塞のリスクが約5倍、心不全のリスクが約4倍も高くなります。
そのため治療や管理で合併症を防ぐことが大切になります。

■心房細動(しんぼうさいどう)による脳梗塞
心房細動は心房がけいれんしたような状態になり、心房がきちんと収縮しないため心室への血液を送り出しにくくなり、心房内で血液がよどんで血のかたまり血栓が出来やすくなります。
心房細動によって作られた血栓は、血液に乗って運ばれて脳の血管に詰まると脳梗塞を引き起こします。
心房細動により脳梗塞を引き起こして社会復帰できる確立は約30%ほどになります。
約50%の人は、死亡または歩行困難・寝たきりになってしまいます。

●脳梗塞を起こしやすい人
・75歳以上
・心不全を起こした人
・高血圧の人
・糖尿病の人
・脳梗塞を起こした人
・一過性脳虚血発作を起こした人

心房の中で血栓を出来にくくする抗凝固薬を飲んで予防します。
これまでは抗凝固薬にはワルファリンが使われてきましたが、近年ではダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンなどの抗凝固薬も使われています。

■心房細動(しんぼうさいどう)による心不全
心房細動を放置すると心拍数や脈拍数が増加します。
長期間この状態が持続すると心臓のポンプ機能の疲労をきたし、心室の収縮力が徐々に低下して十分な血液が送り出されなくなり心不全が起こりやすくなります。
またもともと心臓の機能が弱っている場合は、短期間の間に心拍数が上昇しただけでもで心不全が起こりやすくなります。

■心不全を起こしやすい人
・心臓病の人(心臓弁膜症、心筋梗塞)
・貧血の人
・腎臓の機能が悪い人
・糖尿病の人

■心房細動の治療の基本
・心房細動を可能な限り少なくする
・心房細動を受け入れて管理する

■心房細動を可能な限り少なくする治療法
心房細動を停止させたり起きないようにする抗不整脈薬を使います。
抗不整脈薬は心房で起こる異常な電気信号を抑えることによって心房細動を生じにくくします。
長い間、抗不整脈薬を服用していると効果が薄まったり、副作用が起こって服用ができなくなったりします。
抗不整脈薬の副作用としては、便秘、尿閉、心不全などが起こったりします。

■カテーテルによる心房細動の治療
抗不整脈薬の効果が不十分だったり、副作用で服用継続できなかったりした場合は、カテーテルによる治療を行います。
カテーテルによる治療では高周波カテーテル・アブレーションや冷凍凝固アブレーションが行われます。
足の付け根の部分からカテーテルで高周波電流発生装置を挿入し、異常な電気興奮の発生する部位に押し当て、背中側に貼った対極版との間で高周波を流して病変部を焼きます。
冷凍凝固アブレーションでは、焼くのではなく冷凍凝固で異常な電気興奮の発生場所を壊死させます。

カテーテル・アブレーションは心房細動の種類によって効果が異なります。
心房細動は発作性心房細動と慢性心房細動の2つに分けられます。
発作性心房細動は不整脈を防ぐ薬を飲む飲まないに関わらず7日未満で自然に治ります。
多くの場合、数時間から数日で治ります。
しかし心房細動の多くは発作性心房細動を何回か繰り返すうちに心房細動が止まらなくなる慢性心房細動へと進みます。
カテーテル・アブレーションは発作性心房細動に特に有効ですが、慢性心房細動には高い効果が期待できません。
慢性心房細動になっても慢性となってから1年以内であれば効果が望めることからカテーテル・アブレーションを行います。
冷凍凝固によるアブレーションが行われるのは発作性心房細動に限られます。

発作性心房細動がなくなる確率は、アブレーション1回で約50〜60%程度になります。
もう一度アブレーションを追加すると約80〜90%程度になります。

■カテーテル・アブレーションによる心房細動の治療のリスク
・脚の付け根からの出血
・心臓タンポナーデ
・脳梗塞

心臓タンポナーデとは、心臓の周りに血液が溜まることをいいます。

■心房細動を受け入れて管理する治療法
心房細動を受け入れて管理する治療法では心拍数を減らす薬を使用します。
心房細動を受け入れて管理する治療法はリスクが低い点があげられます。
心房細動の症状の多くは心房細動そのものではなく、心室の収縮で起こる心拍数・脈拍数が高いことにより起こります。
心房細動は停止せずにそのままにし、心室の収縮に関わる仕組みに働きかける心拍数を減らす薬を使用して管理していきます。

■不整脈治療の名医(2017年1月時点)
心臓血管研究所付属病院 所長(循環器内科)
山下 武志(やました たけし)先生
不整脈の診断と治療のエキスパートです。