心室細動の治療法、心室頻拍、心肺蘇生法、自動体外式徐細動器「AED」の使い方

心室細動(しんしつさいどう)による突然死
心室細動(しんしつさいどう)は心室がけいれいんしたような状態になり、心室が収縮しなくなるため血液が全身に送られなくなります。
そのため発生から数分で突然死に至ることもあります。

■心室細動(しんしつさいどう)について
心臓は右心房(うしんぼう)・左心房(さしんぼう)・右心室(うしんしつ)・左心室(さしんしつ)の4つの部屋からなっています。
通常心臓は一定のリズムで動いています。
心室細動(しんしつさいどう)は心室がけいれんするように細かくふるえる不整脈をいいます。
心臓の筋肉が正常に拡張と収縮を繰り返さなくなるため、やがて心停止状態になります。
脳への血流も不足するため発症から6秒で意識を失い、3分で脳が重いダメージを受けます。
すぐに救命措置を行わないと突然死につながってしまいます。

■心室細動を起こしやすい人
・心臓の病気がある人
・心室頻拍(しんしつひんぱく)がある人
・血縁者に不整脈で突然死した人がいる

心筋梗塞、心筋症、重症の心不全、大動脈弁狭窄症などの心臓の病気がある人が心室細動を起こしやすいといわれています。
1分間の脈拍が100拍以上、多くは150〜200拍にもなる心室頻拍のリスクが高くなります。
心臓病があるのに気づかずに激しい運動をしたり、過労が原因で心室細動(しんしつさいどう)を起こしてしまう人もいます。

■心室頻拍(しんしつひんぱく)の症状
・動悸
・息切れ
・失神

心室頻拍(しんしつひんぱく)から心室細動(しんしつさいどう)に移行しやすいとされています。

■心室細動は朝の運動に要注意
心室細動は朝の9時前後に起こりやすいとされています。
心臓の拍動には自律神経が大きく関わっているため、朝9時前後に心臓に負担がかかりやすくなります。

■自動体外式徐細動器「AED」が心室細動による突然死に有効
心室細動による突然死から命を守るためには自動体外式徐細動器「AED」を使うのが有効となっています。
平成25年にはAED使用率は16.5%となっています。

■心肺蘇生法
まず倒れている人がいたらまず意識の有無を確認します。
大きな声で肩を軽くたたきながら「大丈夫ですか」と呼びかけ、反応があるかどうかを確認します。

周りに人がいる場合は助けを求めます。
「119番してください」「AEDを探してきてください」など。

胸とお腹が上下に動いているかどうかを目で確認します。
普段どおりの呼吸でなければ呼吸なしと判断します。
不規則な呼吸の場合も呼吸なしと判断します。
呼吸がある場合は横に向かせて救急隊の到着を待ちます。

呼吸がない場合は胸骨の圧迫を行います。
胸の真ん中に手のひらの付け根あたりを当てます。
逆側の手を組み合わせるようにかぶせます。
ヒジを垂直に立てて体重を乗せるように胸を圧迫します。
1分間に100〜120回くらいのテンポで強く速く圧迫します。
成人の場合は胸が5cm沈む程度に押します。
これを30回繰り返します。
圧迫と圧迫の間は力がかからないようにします。

人工呼吸を行います。
あごを少し上げて気道を確保します。
鼻をつまんで、自分の口を大きく開けて相手の口に当て、軽く胸が上がる程度に1秒間に1回を2度行います。

胸骨圧迫30回、人工呼吸2回を繰り返します。

●AEDの使い方
開けると音声が聞こえてくるので、その指示に従います。
絵にかかれた通りに右胸上と左わき腹にパッドを貼ります。
電気ショックを行うときは周りに人がいないかどうか確認して指示に従います。

救急隊がくるまではAEDの電源は切らずにパッドはそのままにして、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返します。

■心室細動の治療法
心室細動を起こしやすいと診断された場合は、自動的に電気ショックがかかる植え込み型徐細動器「ICD」を体に埋め込みます。
ICDは拍動を監視して心室頻拍や心室細動が起こると自動的に電気ショックや弱い電気刺激を与えて拍動を正常に戻します。
ICDは左の鎖骨の下に切開して本体を埋め込みます。
本体につながったリードを右心房と右心室に挿入し、心臓の動きをモニターして必要なときに電流を流します。
手術後は数ヶ月に一度定期検査を行います。
発作がなければ約6年もちます。
心室細動が頻繁に起こる人は、カテーテル・アブレーションで異常な電気信号が起きている部分を焼いたり、薬を用いて心室細動が起こりにくいような治療を合わせて行ったりします。

■不整脈治療の名医(2017年1月時点)
心臓血管研究所付属病院 所長(循環器内科)
山下 武志(やました たけし)先生
不整脈の診断と治療のエキスパートです。